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SmaRICフェロー 東北大学 西山大樹先生からのメッセージ

2011年3月11日に発生した東日本大震災は、携帯電話が広く社会に定着してから初めて起きた大規模災害でした。地震・津波の影響による基地局等の機能停止は大規模な通信途絶を引き起こし、発災直後からの数日間、被災地に非常用通信設備等が展開されるまでの期間、被災地における被害状況の把握や避難情報の発信は困難を極めました。「携帯電話がつながらない状況でもどうにかして情報を伝えたい」という切実な思いに応えることは、残念ながら当時の情報通信技術には不可能でした。

 

それから7年あまり、私たち東北大学の研究グループは、東日本大震災を経験した者として確固たる強い決意の下、この不可能を可能にすべく研究開発を行ってきました。私たちが着目したのは、発災当時、被災者の多くが携帯電話・スマートフォン・ノートPCなど何らかのモバイル通信端末を持っていたという事実です。たとえ基地局等の通信インフラが損壊してネットワークに繋がらない状況に陥ったとしても、被災地の人々が持つモバイル通信端末同士が直接繋がることができれば、情報を遠くまでリレーすることができます。この発想の下で誕生したのが「スマホdeリレー」です。

 

2011年にスタートしたスマホdeリレーの研究開発は、およそ6年の歳月をかけて理論研究から応用研究、そして実用化へと至りました。その間、フジサンケイビジネスアイの第29回独創性を拓く先端技術大賞特別賞や、米国電気電子学会通信ソサイエティアジア太平洋地域最優秀論文賞の表彰を受けるなど、国内外から高い評価を獲得しています。そしてこの度、その社会実装・利活用の促進に向けた「スマートフォンによるリレー通信イノベーションコンソーシアム(SmaRIC)」の発足により、通信途絶解消という最終目的達成に向けた活動は、一大学の研究グループの枠を超えた新たなフェーズに突入することになります。

 

東日本大震災は、人の時間尺度を超えて発生する大規模な自然災害を想定外として扱うことの危険性を、日本社会全体に突きつけました。一度発生すれば国の存亡をも揺るがしかねない巨大災害は、首都直下地震や南海トラフ巨大地震の切迫が指摘されているように、たとえ発生頻度は少なくとも、今後も繰り返し起こりえる現実の脅威です。これに備えるためには,東日本大震災の教訓でもあるレジリエンスの考え方を踏まえ,社会インフラを高度化していくことが求められます。通信途絶という社会課題の解決を通じて、このコンソーシアムがレジリエントな社会の実現に貢献していくことを期待しております。

 

2018年7月2日 西山大樹、加藤寧

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東北大学 加藤・西山研究室:http://www.it.is.tohoku.ac.jp/

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